何気なく、タイトルを見た時にピンときて購入した本ていうのは、結構当たりなのだ。
今回ご紹介するこの本も私的に大当たりだった一冊。
ちょっとした出雲の旅行記かと思いきや、神社に対する深い洞察と、石見地区の伝統芸能、石見神楽への惜しみない愛と、水木しげるさんへの多大なるリスペクトが詰まった一冊でした。
『出雲世界紀行 生きているアジア、神々の祝祭 野村 進』
出雲は神さまと共に生きるまち
出雲の地域にはやはり神々が住んでいるらしい。
洪水がおきても、この家が無事だったのは水神さまのおかげだと真剣に語るおばさんがいたり、
まちの不動産屋広告には、物件情報に「(敷地内に)荒神様有り・隣地に水神様とお稲荷様有り」なんてお得ポイントとして書かれていたり。
こんな不動産広告を地元の部屋探しで見つけたら、ツッコミまくられるだろう。
さらに、膝神さまとか肘神さまとか、ほぼお笑いコンビ、流れ星☆のネタやんていう神さまもいるらしく、おはぎを膝や肘にこすりつける(食べてもらっているのか?)伝統もあるとのことだ。
ようするに、暮らしの端々に神さまが息づいているのだ。
2013年には60年に一度行われる出雲大社大遷宮があった。本殿遷座際のおり、御神体が神座におさめられたと同時に出雲大社は激しい風がどうと吹き、驟雨にみまわれたとか。
これは神さまがお待ちくださったのだと神官が何人も神威を感じて涙を流したという。
やはり、出雲には何かがあるに違いない、そう思わざるを得ない。
わたしも神さま好きとして、神さまはいらっしゃる!(スピは嫌いだけど、神さまはいると思っている)と名乗る身だが、ここまでの体験はない。
精進が足りないのか、愛が足りないのか。
いつか、ちゃんと神さま体験をしてみたいと思う。
出雲旅行記で著者野村さんは、娘と、さらに二人の友だち計3人の「神社ガール」を連れて出雲の神社を回っている。
50代のおじさんから見て「カッコ悪く、ダサい」としか思えない神社に女子が集まり、「カッコいい❤️」「かわいい」とくる。
彼は若い女性のアンテナの感度の高さを非常に買っていて、10代、文学部、女子学生を集めて旅に出る。これだけ聴くと怪しいおじさんだが、いたって真剣。
そしてこの文学部女子大生たちの言葉がまさに的を得ているのだ。
さなえさんが、
「やっぱり、あの木製の大鳥居をくぐったときから、『非日常』っていうか、とても神聖な空気が流れているような気がします。私は伊勢神宮にも行ったことがあるけれど、伊勢のような『厳しさ』はなくて、もっと人に寄り添う身近な感じかな」
こう感想を述べると、萌花さんも、
「いま桜が咲きかけているけれど、これが満開になったら本当に〝桃源郷〟だよね」
彼女たちの言葉と、野村さんの視点に導かれた出雲紀行は、まさに神社めぐりを共にしている気分。
必ずこの出雲旅行は行くぞ!と心に決めたのだった。
というわけで、わたしの備忘録として、この本に出てくる神社の引用部分をメモしておく。
私たちは、出雲大社をふりだしに、八重垣神社、須佐神社、神魂神社、立石神社、志多備神社、美保神社、多伎神社といった神社をまわり、鳥取県境港市にある「水木しげるロード」の「妖怪神社」にも足を伸ばした。地元に根づいた〝古社〟の多伎神社では、運よく〝仮遷宮祭〟にも立ち会えた。 複数の神社には、前章に登場した「現代のラフカディオ・ハーン」ことダスティン・キッドさんもご一緒している。 ほかに私個人では、万九千神社、佐太神社、熊野大社、揖夜神社、眞名井神社、須我神社、賣布神社、阿太加夜神社、日御碕神社、長浜神社、金屋子神社、玉作湯神社なども訪ねており、必要に応じ文中でふれたい。
よし、このメモでいつでもこの出雲紀行を辿れるぞ笑
境港
水木しげるさんのことは、ゲゲゲの女房で知ってるくらい。戦地で片手を失って、現地の人に匿ってもらって、大変な思いをして帰ってきて、片手を失った状態でマンガを描き始めて……。
面白かったのは、ちょっと風変わりな家のルールがあって、たしか、寝ている人は起こしてはいけないっていうの。だから子どもたちも起こされないから遅刻するという……。
やっぱり変わってるんだなーくらいだったんですね。
もちろん鬼太郎は好きだったからよく知ってるけど。本書での野村さんの敬愛の念がすごい笑
また、佐野史郎さんや京極夏彦さんなどの有名な方の水木しげる論もあり。
石見
石見神楽はなんとなくしか知らなかったが、こんなにまちに愛された芸能だとは。
一般の子供たちが街のヒーローのごとく楽しみにしているのが石見神楽のヒーローたちだという。
クライマックスはスサノオがヤマタノオロチを退治する場面など、周囲で子供が剣を振り回して真似をする。
出雲の神々に導かれたかのごときライターの野村さんの出雲、石見、境港の旅。無性に出雲旅行に行きたくなった。