以前、とあるイベントに参加していらした田中元子さん。
「私設公共について考える」というそのイベントには全国で活躍する人が集まっていたのだけど、彼女の一際目立つ、くるくるの金髪、目を惹くファッション、発言の一つひとつにわたしはすっかり惹き込まれてしまいました。
「私」の存在が眩しい彼女に一目惚れしてその場で買った一冊を紹介します。
『マイパブリック&グランドレベル』(田中元子著)は、「公共の場は自分たちで作れる」と自分レベルでできることに気付かされる魅力的でパワフルな一冊でした。
「好き」をふるまうから始める「マイパブリック」
内容的には続きのストーリーで『マイパブリック』と『グランドレベル』の2部構成です。
まずは『マイパブリック編』。
著者の元子さんは、フリーコーヒーを振る舞う小さな屋台での活動を通じて、「ふるまう」の場こそ、人々が自然に集い、日常的な会話が生まれる公共の場となっていることに気づきます。
「タダでコーヒー配ってるんでしょ?」と言われると、そうっちゃそうなんだけど、でも彼女が目指す「本質」はそこではない。
公園に突如現れるシマシマ屋根の小さな屋台。
そこに「フリーコーヒー」と書かれたA型看板の文字。人はそのアイコンを見かけると「え?コーヒー飲めるの?」と集まってくる。
普段は素通りするだけの人が、
立ち止まったり、会話したり。
そこに人と社会をつなぐ場が創出される。
元子さんが「パーソナル屋台」と呼ぶそれを作るワークショップもある。(今はやってないのかな?)その参加者が考えた屋台もとてもユニーク。
インドを大好きな人がチャイをふるまう屋台、
ヘアアレンジをしてくれる屋台、
交差点の待ち時間、子どもとちょっとしたゲームをする屋台、
ガーベラを自転車のカゴにいっぱい詰め込んでみんなに配る屋台。
中には自分の好きな万年筆コレクションを並べて見せる、そんな屋台の人もいた。
自分でも手が届きそうな、
これなら私もできそう、と思える
そんな小さな「私設公共」。
ちょっとしたことでいい。
家や会社から一歩踏み出して、
まちなかで「自分の好き」を「ふるまう」こと。
社会とつながったり、
見知らぬ人と会話ができたり
確かにこんな「マイパブリック」があちこちに増えれば、確かに孤立してる人がどうとか、コミュニケーションがどうとかいう問題も、もっと楽しく解決に向かえそうだ。
そして元子さんが建築ライター視点で気づく。
全ては一階、グランドレベルに、問題解決の糸口があるんじゃないかと。
「グランドレベル」=「一階」づくりから始めるまちづくり
次に『グランドレベル編』へと流れるように続きます。
この本を通して感じるのだけど、著者の本来の仕事、建築ライターとして、まちづくりを考える彼女の視点が興味深い。
彼女は「建物や街、公園など、私たちが日常的に利用する空間は、この視界に入る範囲「一階」=「グランドレベル」がとても重要なのでは?」……と。
で、気づいたらすぐ株式会社グランドレベルを作ったそう(早い)。売り上げの見込みとか何もこの時に考えてません笑
たしかに、いつもネットで海外の街の風景を見ると、とてもまちの人たちが生き生きして楽しそう!豊かに暮らしてそう!って思いません?
「まちで人々がくつろぎ語らう」
って景色。
例えば軒先のオープンテラスでゆったりと語らう、なんて景色。
海外のまちの多くは一階は必ず店舗とし、さらに道路に向けてオープンにするよう、取り決めがあって、
通路以外のスペースは、店舗側に自由に裁量が任せられ、椅子を置いたり、商品を並べたり、好きな植物を並べてみたりできる。
お店と、まちを歩く人と、道路までがシームレスに、ゆるくつながっている一体感。
だから「オープンカフェ」のあの椅子のある空間が、まちと人を結びつけていて、そのおかげで「まちとつながっている」を感じる景色になっているという。
それが日本は極端に少ない。
国民性にもよるのかもだけど。たしかに。
また、例えば台湾は、街にベンチがとても多いそう。
台湾では、街中にもちょくちょくベンチが配置されていたり、街中で「ベンチ」の果たす役割は大きい。
それに店舗だけでなく住宅の壁の、ちょこっとしたスペースにまで椅子がデザインされていて、誰でも街で座れる配慮があちらこちらに見える。
一方、日本は極端にベンチが少ない国だそう。
確かに、ベンチも少ないかも。ショッピングモールの中なら見るけど、街中はあまりみないかな。あってもあまり座っている人を見かけない気はする。
日本では、都会の人は忙しなく歩き、田舎の人は車で移動して街の見える範囲「外の一階」で「くつろぐ」「交流する」をせずに通りすぎる印象。
オープンテラスやベンチでくつろぐ環境ができていない。
じゃあどうする?
法律が変わったり、行政が動くのを待っていたら永遠に変われない。元子さんはずんずんできることからやっていく。
屋台を作ってもらってまちに出る。
一階にベンチを置く。
一階を変えていく。
思いついたら動く。必要と思えば会社を作り、行政で動けない部分を請け負うという。そのスピード感。人の巻き込み感。
お会いした時に感じたオーラというか、得体の知れないパワーを感じたのだけど、この行動力から発しているのかもしれない。
さて、私ができることはなんだろう?
正直いうと今すぐに思いついてはいないのだけど。
でもこの考え方にビビッと来るものがあり。
マイパブリックとグランドレベルの視点はきっと、今後の私の活動の中で重要になる、そんな気がしている今日このごろです。
また何か動いたり、人に会ううちに、何かにつながる、そんな気がしています。