あの富士の神であり、美しい桜の花の神、コノハナサクヤヒメのお話、その2です。
前回はこちら。
コノハナサクヤヒメ(以下サクヤ姫)は桜の花の神様です。
というととてもか弱い女性をイメージしますが、実は怒らせるとかなり恐い気の強い女神さま。
まずはサクヤ姫の旦那さんをもう一度ご紹介しましょう。その1でも解説しましたが、旦那さんのニニギノミコトは天孫といって天照大御神の孫にあたる偉い方。
高天原の稲穂を地上で育てて、日本を繁栄させるようにと仰せつかって天の国から降りてきたんですけどね、降りてきて早々サクヤ姫に一目惚れをして結婚を迫りました。
そのときになぜか父親が姉のイワナガヒメ(ちょっとブス)を差し出し、ニニギが「いらない」と親元に返してしまい、寿命が短くなった話は前回お話しした通りです。(↑さっきの前回のお話し参照)
サクヤ姫とニニギのお話はさらに続きます。
一目惚れをしてすぐに結婚をしたこの2人。
そしてサクヤ姫は一夜にして妊娠しました。 さすがに一夜で孕んだのは早すぎると、ニニギは疑いました。
「それって俺以外の男の子供じゃないのか?」と。
これに腹を立てたコノハナサクヤヒメ怒ってこう答えます。
「は?何言ってんの?あんたの子供よ!
そう、信じないんですね?いいでしょう。
それじゃあ、私はこれから出産しますけど、産屋に火を放ってその中で子供を産みます。
もし他の男の子供なら、子供は無事に生まれることはないでしょう。もし無事だったら無事に産まれるでしょう。」
こわっ。
そう誓約(うけい)をすると、産屋にこもり、出入口を全て塗り込めて(!)自分は外に出られない状態で火を放ちました。
もう執念です。狂気とも言えます。
見ようによってはプリンセステンコーのイリュージョンです。
女性って恐ろしいことをやりますね。
でも自分の正当性を主張するために、彼女は権力者だろうと夫だろうと立ち向かいます。
そして炎が勢いよく燃え盛っている時に生まれた子供が火照命(ホデリノミコト・海幸彦)、その次に火須勢理命(ホスセリノミコト)、火が次第に遠ざかっていく時に火遠理命(ホオリノミコト)が生まれました。
なんと、三子です。
これで無事にサクヤ姫の疑いは晴れたわけですが……女って恐ろしいですね。
男性方、お気をつけください。
あ、この時の子供が「海幸彦、山幸彦」(昔話で聞いたことあります?)で、山幸彦の方が初代天皇・神武天皇の祖父に当たります。
サクヤ姫のご利益
大変な状況でも出産したことから、コノハナサクヤヒメは安産の神さまと一般的には言われていますが……でもそんな安産なんて比ではない、大きなご利益として、あなたの権利を守る神であると思っています。
強く意見をしていきたいとき、なめられてなんかいられないっていうとき
コノハナサクヤヒメは力強くあなたの前に出て言ってくれます。
「は?何か言いました?それがどうかしたんでしょうか?なめてんじゃねーよ」
ぜひ、味方になってもらいましょう。
お酒の神さまでもある
そんな夫婦の揉めごとを知ってか知らずか、子供たちが生まれたことを非常に喜んだのがオオヤマツミ、サクヤ姫のお父さん。孫の誕生ですし、いいところに嫁いだ結果の孫だからさらに嬉しかったんでしょうかね。
天孫の子供の誕生を記念して、お酒を醸して祝ったんです。
それも徹底していて、占いでちち稲田で収穫した神聖な米を使用して酒を醸しました。このことから、オオヤマツミを酒解神(さけとけのかみ)、コノハナサクヤヒメを酒解子神(さけとけのこのかみ)と呼ぶようになりました。
つまりは酒造の神ってことです。
清らかな水を生み出す”山”の娘であるサクヤ姫が、天孫ニニギ(稲穂の神)の子を産んだのだから、良い水と良い米から酒を作れるわけなんですよね。
火の神様→富士山の神霊
火の難を避けたことから火の神でもあり、また「火山鎮火の神」として、噴火を繰り返していた富士を鎮めるためにコノハナサクヤヒメは祀られました。
また、父オオヤマツミが山の神であることから、富士山の神霊ともされています。
農耕の神
また、燃え盛る火の中で新しい命が生まれたことから、田畑を焼いて新しい穀物が誕生する収穫や焼畑農耕も背後に関係あるとも言われています。
農耕にも関わっているんですね。
さいごに
コノハナサクヤヒメについて書いてみました。美人だけど、単なる美人じゃない、自分の自己主張はしっかりするし、自分の守るところはきっちり守っていく、そんな姿勢が潔く、気持ちの良い女性です。
その1で登場した姉のイワナガ姫とは仲が悪いと伝えられていますが、本当のところはどうなんでしょう。
まあ何はともあれ人を見た目で判断しないようにしましょうね。
そしてしっかり自己主張はしていきましょう。その時は、サクヤ姫がきっとあなたを助けてくれるでしょう。
イワナガ姫についてはまた書いていきます!実は縁結びの神様になっているんですよ。
ではでは。かしこみかしこみ。